塗料の基礎知識 Vol.1
1. 塗料の役割
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なぜ塗装するの?なぜ塗料が必要なの?
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塗料(液体)の状態では、本来の役割を果たせません。
塗装して乾燥した塗膜の状態(固体)になり、初めて役割(性能)を発揮します。
塗料(塗膜)の役割は大きく分けて、下記の3種類あります。
① 保護
下地(壁材・屋根材・鉄・木等)が、太陽光、雨、風、排気ガス等の影響で、劣化することを防ぐ。
② 美観
「退色してムラになった」「色が薄くなった」「さびが発生した」「汚れてきた」など、見た目が悪くなった部材に塗装することで、綺麗な状態に戻り
塗料の色を変えることで、建物全体の印象を変える。
③ 機能性

塗膜により、部材の機能を向上させる。
・遮熱塗料を塗装することにより、直射日光の影響を遮り建物が暖まりにくくなる。
・防藻・防カビ性能を付与することにより、藻が生えることを抑える。
・結露防止塗料を塗装することにより、室内の結露を緩和する。
・さび止め塗料を塗装することにより、さびの発生を抑える。
2. 塗替えを行う理由
新築時、建物に使われている屋根材や壁材は、あらかじめ塗装が施されています。
屋根や壁が塗装されていることにより、長い間、風雨や太陽光から建物を保護しています。
しかし、長年、風雨や太陽光にさらされることにより、少しずつ塗膜の表面から劣化が進み、美観が損なわれていきます。
そのまま放置していると、美観が損なわれるだけでなく、塗膜の保護性能がなくなってしまい、建物内部に水などが入り込むようになります。
塗膜の保護性能が無くなる前に塗替えを行うことで、建物全体が長持ちするようになります。

※この段階で塗替えを行うことが大切です。

チョーキング 退色・艶低下 膨れ

汚れ 藻の発生 塗膜の剥がれ

基材からのはがれ さびの発生 塗膜のひび割れ

基材からのひび割れ 目地部のひび割れ シーリングの破断
3. 塗料の中身
塗料は、有機物(樹脂)や無機物(顔料等)など、さまざまな原材料を組み合わせて作られます。

樹脂(合成樹脂)
- 塗料の主成分。樹脂の種類によって、耐候性・硬さ・汚染性などが決まります。
- 樹脂にはアクリル・ウレタン・シリコン・フッ素、エポキシなどの種類があります。
- 樹脂は、あらかじめ水や溶剤中で、一度細かくした状態にして塗料化しています。
エマルション
水中に樹脂を細かな粒子状にして混ぜ込んだもの。牛乳の様な白濁とした液状。
ワニス
溶剤に樹脂を溶かしたもの。樹脂が溶けていて、水あめのような透明な液状。


添加剤
- 様々な機能を持たせるため、補助的に添加します。
- 塗料を塗るまでに必要なものと、塗膜になってから性能を発揮するものがあります。
増粘剤
保管中に塗料成分(樹脂や顔料)が沈殿しないように、塗料の粘性を調整する。
増粘剤を入れることにより、ローラーで塗りやすくなる。
界面活性剤
洗剤とよく似た材料。顔料が塗料中で綺麗に混ざるようになり、塗料を下地に塗付しやすくする。
凍結防止剤
水性塗料の溶媒(水)が、低温で凍るのを防ぐ。
防腐剤
水性塗料が腐るのを防ぐ。
防藻剤
塗膜に藻が生えるのを防ぐ。
顔料
- 塗料に色を着けたり、厚みを持たせたりします。
- 大きく分けて「体質顔料」「無機顔料」「有機顔料」の3種類があります。
体質顔料
着色しないが、塗膜に厚み(肉持ち感)を持たせる。炭酸カルシウム、クレー等
無機顔料
無機成分で出来た、色を着ける着色顔料。無機成分なので耐候性が高いが、くすんだ色合いになる。
白色顔料→酸化チタン等
茶色顔料・赤さび色顔料→酸化鉄
有機顔料
有機成分で出来た、色を着ける着色顔料。
有機成分なので鮮やかな色合いが出せるが、耐候性が無機成分より若干劣る。
緑色顔料→フタロシアニングリーン
赤色顔料→シンシャカレッド
青色顔料→フタロシアニンブルー

無機顔料のくすんだ色合い 有機顔料の鮮やかな色合い
溶媒
- 塗膜になる成分を溶かしている液体のことです。
- 水や有機溶剤(トルエン・キシレン等)などがあります。
- 塗料に流動性を与えて塗装しやすくします。
過去、塗料に配合されていた有害成分
- 塗料には、過去に配合されていた体に特に有害な成分もあります。
石綿・アスベスト
細い糸・針のような形状。
長年、肺に入り込んでいると、肺がん・中皮腫(ちゅうひしゅ:ガンの一種)などの病気となる可能性がある。
80年代後半までは、仕上塗材の粘性調整・割れ防止に配合していたが、現在の塗料や仕上塗材には、一切配合していません。
ホルムアルデヒド
大量に身体に取り込まれると、頭痛になったり目が痛くなったりする。
主に合板の接着剤に使用しており、塗料に入っている場合もある。
当社では、ホルムアルデヒド配合の塗料は、一切使用していません。
クロム化合物
金属元素のひとつ「Cr クロム」の化合物。
さび止め塗料もしくは着色顔料として昔使用されていたが、非常に強い毒性があり現在は使用が規制されている。
当社では、クロム化合物配合の塗料は一切使用していません。
鉛化合物
金属元素のひとつ「Pb 鉛」の化合物。
さび止め塗料もしくは、着色顔料として昔使用されていたが、非常に強い毒性があり現在は使用が規制されている。
当社では、鉛化合物配合の塗料は一切使用していません。
4. 塗膜が出来るまで
- 様々な工程を経て、塗料が塗膜になります。
- 塗料の状態は、製品ではなく半製品です。塗膜の状態となって、はじめて商品となります。
① 工場で塗料を作る
- 分散機で、溶媒・樹脂・添加剤・顔料などの原材料を混ぜて塗料を作ります。
- 出来た塗料は缶に詰めて保管します。

② 色を付ける
- 指定された色に合わせて塗料に顔料を入れて色を付けます。【調色】

茶色の塗料
③ 塗装を行う
- 塗装現場で塗料を塗ります。

③ 塗膜になる
- 塗膜となったものを製品と呼びます。
